中間ストーリー36
〜おたから〜
 (2/4)


パンパン!!


レニウス&レイド:!!


二人が言い争っている最中に手拍子を2発打ってきたのはファーラーだった。


ファーラー:感動のシーンなのに申し訳ありませんが・・・
        またもこちらにお客様が2人いらっしゃったようです


レニウス(また新たな刺客か…こんな時に…!!)


???1:おっとぉ…、ベイルになる方法、ようやく見つけたぜぇ…w


???2:その杯、私達に譲って頂きたい。


現れ出たのはレックスバルキスだった。
彼らZECTのメンバーは、魔力という存在を我がものにするためにベイルになる方法を探していた。


レイド:お前らも"杯"を狙いに?


レックス(???1):あぁ、ここの杯は俺たちが貰っていくぜw


ファーラー:おやおや…、今日に限ってこんなにもお客さんが来られるとは…。
       残念ながら今は杯1つしかないのですがね。


バルキス(???2):ならそなた達には引き下がっていただこうか。


レイド:また邪魔者が入ったか・・・、仕方ない、キミ達には少々痛い目見て貰おうw
     マグネティック・フィールド!!


レックス:なっ・・・そんな馬鹿な・・・!!磁界を操る属性だと!?



磁属性というのはあらゆる物質を引き付け、放つ能力だ。
一般的に磁属性は巨大な磁石を落としたり、せいぜいある程度重いものまで手で引き付けては敵にに放つものだ。

だが彼の場合、その威力は驚異的なものであり、重力や念力を操る者にも劣らない程に強力な磁力だった。
下手をすれば、倒れたビルを丸ごと持ち上げる程かもしれない。

炎属性の人間ですら、余程高熱のものを出さない限り、磁場を崩すことは難しいだろう。

※磁界は高熱で熱すると分子配列が崩れ、磁力を失う。



バルキス:案ずることはない、奴の狙いはあくまでも"杯"・・・
       奴を相手にしなくても"アレ"さえ奪えば・・・。



レイド:させないよ?w
     マグネティック・フィールド!!


レイドは部屋の中心に置いてある杯に向けて手をかざした。
言うまでもなく杯を引き付けるつもりなのだろう。しかし・・・


バルキス:させるか!
       ディオ・ストーム・ショット!!


バルキスはレイドが引き付けようとしていた杯を目掛けて銃を発動した。


レイド:危ないっ!!


レイドが磁界によって杯を引き付けているが
バルキスはその磁界の軌道を読んでおり、正式には弾が杯に当たるよう調整して銃を撃ったのだ。


しかし、そのバルキスが所属しているZECTの目的は、その杯を手に入れること。
破壊してしまっては元も子もないのだが・・・。

だとすれば、なぜバルキスは杯を目がけて銃を撃ったのだろう。
レイドを狙っても彼はそれを容易く避けることくらいは読んでいたのだろうが・・・。



と、次の瞬間、バルキスがあえて"杯"を狙った理由が明らかとなった。



レイドは磁界を反発させた。
つまり磁場を逆流させたのだ。


杯を割らないようにするにはそれしか方法はなく、レイドは磁界を反発せざるを得なかったのだ。
そしてその杯が向かった先は・・・



バルキス:おっと・・・



バルキスはその杯を手でキャッチした。
しかし何も起こらなかった。
彼がそれに触れても意識を失わないどころか、彼は表情1つ変えていなかったのだ。




つまり人造人間が杯に触れたところで何も起こらないということである。





しかし・・・


レイド:な・・・


本来ならその杯に触れた瞬間、精神世界へと飛ばされ意識を失うのだが
元から魔力を持っている人間は"杯"に触れてもベイルになるための"儀式"を受けることはできない・・・



運命はレイドをそう誤解させた。
レイドはバルキスが実は人間ではないことを知らないのだ。



レイド:バカな・・・僕のような既に魔力を持つものがあれに触れても結局は意味ないというのか?



しかし、ファーラーは気付いていた・・・。
バルキスが人間でないことに。




ファーラーは元々魔力を持つレイドが杯に触れるとどうなるかを見てみたいと思っていた。
しかし、ZECTがその杯を利用し、一体どのような技術を施していくのか・・・


ファーラーにとっては、むしろそっちの方が面白そうだと思っていた。


だからファーラーはあえて杯に触れても何も起こらないのは
それに触れたバルキスが人造人間だからという事実をレイドに教えなかった。



レイド:(ということは、さっきレニウスの言っていた2乗するという件は所詮予測だったということだな・・・)




魔力を元々持っている人間が杯に触れても何も起こらないというのはレイドの勘違いであり
真実は、バルキスは人造人間だから杯に触れても何も起こらなかっただけのこと・・・







レイド:風の銃使い・・・、キミはバルキスといったかな?



バルキス:そうだが、それがどうした?


レイド:キミはたった今、この世界のお宝を手にした・・・
     でもキミ、何か"大切なお宝"を失ったかのような目をしてるね


バルキス:どういう意味だ?


レイド:キミはひょっとして、ZECTとかいう組織に利用されてるだけなんじゃないのかい?
     さしずめ、大切な思い出を消されて操り人形と化したってところかな?w


レイドのその言葉に、バルキスは頭に血が上った。


バルキス:黙れ!貴様に俺の何が分かるっていうんだ!


レイド:分かるさ。少なくとも、お宝に関することはね。


バルキス:・・・・・・。



レックス:まあいい、いずれにしてもその杯はもう俺たちのモノだ。頂いていくぜw


レックスは、バルキスと共に教会の入り口へと向かい
何処かへと去っていった。


レイド:僕があの杯に触れても意味がないのならここには用はない。
     でも、あのバルキスって男、この世界にとってどういう存在なんだ?


レイドもレックス達が消えた後、教会から去って行った。


レニウスもレイドを追って外に出た・・・



そして最終的に教会の中に残されたのはファーラー1人・・・。





ファーラー:(どうやら…、今回の私の出番はこれで終わりのようですね…。
         まあいいです、またA Cloudy Day本編の方でお会いしましょう。





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外に出ると満月の夜空だった。




満月雲に覆われかけており、辺り一面は暗かった。




そんな中、レニウスは早歩きで去ろうとするレイドを追っていた。




レニウス:おい!待てって言ってんだろっ!!



レイド:・・・・・・。



沈黙。
レイドは何も言わずに立ち止まる。



レイド:・・・話変わるけどさ、キミ達はもう気づいているんじゃないかな?
     ルドアの更なる後ろにまだ真の敵が存在するってことをさ。



レニウス:・・・やっぱり本当にいるのか。



レイド:ああ、そうとしか考えられない。だって不自然だとは思わないか?
     ルドアは明らかにWPSや僕、それに正男達と同じ世界に毎回現れている。



正男達のレギュラーはWPSの狗扱い。
レイドは元WPSなのでレーダーは持っている。

なのにルドア達はWPSと接点はないのでレーダーも何も持ってないはず。
それなのになぜか偶然とは思えないほどにWPSに絡んでくる・・・これはひょっとして。



レイド:・・・昨日まではそう思っていた。



レニウス:昨日までは?



レイド:ああ、でも今日、そう"思っている"んじゃなくて、ルドアの仲間がもう一人いると"確信"できた。



レニウス:・・・・・・。




レイド:こっそりルドアの会話を盗み聞きしたんだ。ルドアは奴のことをこう呼んでいた・・・『リカルド』とね。




レニウス:俺たち中央司令部も話し合っていた結果、その結論が出たんだ。
        もしルドアの仲間がもう一人いるとすれば、WPSの行動を全体的に把握している人物だとね。



レイド:僕も同じことを考えていたよ。



レニウス:ということは、やはりルドアのもう一人の仲間ってのは・・・。







レイド:あぁ…もしかしたら……
     リカルドの正体は……ラルズ総監かもしれない。



一瞬にして、恐ろしい答えが浮かび上がってしまった。





レイド:だとしたら面白いね。安易にあらゆるサイトの世界のお宝を手に入れられそうだよ・・・w



レニウス:お前・・・どうするつもりだ・・・?



レイド:さあね、策略はじっくり練る必要があるからね。
     まあでも、それだったらルドアの仲間になってもいいかなぁー。



レイドは珍しくご機嫌な態度を見せた。



レニウス:お前・・・やっぱりお宝が第一なのかよ・・・。



レイド:キミはバカか?



レイドはご機嫌な態度から豹変し、怪訝そうな顔をして言った。
お宝を侮辱されたのが気に入らなかったのか。


レイド:お宝よりも価値のある物なんて存在しないよ。
     もっとも、キミ達と僕では常識が違うから、キミ達からすれば想像もできないかもしれないけどね。


レニウス:俺は悲しいよ、お前がこんなにちっぽけになって…。



レイド:・・・・・・。



また沈黙・・・。
レニウスのことは今でも想っているのだろうか。
そんなことを考えている間もなくレイドは最後の言葉を口にした。



レイド:…じゃあね。また次の世界で会おうじゃないか。もしかしたら、またキミと再会するかもしれない。



そういってレイドは突如現れた灰色の水彩のような模様をした壁に入り込み
その水彩壁ごと姿を消した。異次元ゲートである。
また次の世界へと飛んで行ったのか、あるいはこの世界にまた別のお宝が存在するとすればそこに向かったのかもしれない。



レニウス:・・・・・・。



レニウスはしばらく、その場に立ちすくんでいた。
何に恐れているんだろうか、ルドアの強大さ?それとも…

ただ、1つだけ分かったことがある。
ルドアのもう一人の仲間は、リカルドと呼ばれている。
そしてこれは予測に過ぎないが、そのリカルドの正体はラルズ総監の可能性が高いということだった。


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一方、レイドは・・・


レイド:・・・・・・。


彼はまだ"光る球"の世界に残っているようだった。
どうやらまだ他の目的があるらしい。


そして彼もまた、レニウスに言われたことを考えていた。


──仲間との絆が強さになる、か。


だとすれば、それこそがアイツにとって最高のお宝なんだろう。



じゃあ、僕のお宝って何だ?


・・・。


レイドにとって因縁の深いレニウスとディレイルの2人はどのようなものを大切にしているのか
未だによく分かっていない。





そんなことなど考えず、自分はいつも様々な世界を巡ってその世界のお宝を狙っている。


結局、それ以外の目的なんてハッキリしていない。










だがそれよりも今は、あのバルキスという男のことが気になっていた。


──彼は一体何を失ったんだ?


彼はきっと昔、かけがえのないお宝を持っていたはずだ。


何故そう思うか?彼の・・・バルキスの目はかけがえのないものを失ったような目をしていたからだ。





レイドは自分にとって、本当のお宝が何なのかを考え始めていた。
しかし、それが何なのかは分からない。




ならばそれこそ、あのバルキスという男はどのようなお宝を失ったのか。
参考に、という言い方は少々ズレるが、もしかしたら自分のお宝が何なのか分かるかもしれない。




レイドは一人、そう考えていた・・・。




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♪黒の追跡者
from ばろんの館

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