中間ストーリー39
〜収まる混雑〜
 (2/3)


正男はあと一歩というところで下からの爆風に吹き飛ばされた。
ハシゴから手は離れ、上に飛ばされた。



『正男!!』『兄さんっ!!』『おい!!』


いろんな人の声が聞こえる。
でも、結果的に脱出には成功できたようだ・・・。



緩やかに降る雪であったがそんな中、空中に舞っていた正男は
その緩やかな雪が一瞬吹雪にも見えた。


ゆっくりと回転する正男は何とか着地し、危機は免れたことを確信する。



正男:ふぅ、死ぬかと思った・・・。



浩二:兄さん・・・よかった・・・。



澳門:全く・・・心配かけさせやがって・・・。


正男:みんな・・・すまない、ヴァックを・・・倒せなかった。


ジャック:いいんですよ正男さん。こうしてみんな無事に帰ってこれただけでも。


そう、正男も脱出前には同じことを考えていた。
仲間が全員そろって無事に帰ってこれただけでも十分というもの。
思わずヴァックを倒せなかったことに謝ってしまったが、正男はもしかしたら心のどこかで共感して欲しいと思っていたのかも知れない。


ザトシ:待てよ・・・?さっきから何か変だと思ってたことがあるんだが。


正男:どうした?


ザトシ:俺らがここに入る前。ここには機械兵が沢山いたよな。
      その機械兵の破壊された跡がそこらへんに散らばっているのはなぜだ?


ザトシの言うとおり、辺り一面雪の上に機械兵の残骸ばかりが散らばっていた。
これは一体・・・?


ディレイル:考えられるのは、俺等以外の誰かが機械兵を破壊していったか・・・。
         山賊は前もって退いてるからヘインド山賊ではないだろうしな・・・。


と、ディレイルは1つ心当たりがあった。


ディレイル:(さっきレニウスからあの話を聞いたが、まさか、あいつが・・・?)


正男:ん、どうした。ディレイル?


ディレイル:いや、なんでもない。


ザトシ:まあいいや。よし、じゃあ阻止軍基地に帰ろう!


浩二:待って、その前にあの雪街で待ってる二人に挨拶に行きたいんだけど。


ジャック:ああ、五十朗さんたちに挨拶しとかないと。


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〜北国の街 元・避難施設〜


浩二:・・・え?人事異動した?


施設員:はい。この街を警備してくれる人は先ほど交代したのです。
      五十朗さんと由美さんはZECTの首相であるダークゼイターを倒すための任務に向かわれたようですよ。


ザトシ:ダースベイダー?


正男:お前少し黙ってろ


ザトシ:orz


ジャック:何だ、最後にもう一度挨拶しておきたかったんだけどなぁ・・・。


浩二:仕方ないよ。さあ、阻止軍基地に戻ろう。


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北国を離れ、破壊阻止軍の基地に戻って来た正男たち一味。
もちろん、ここは雪など降っていない。真夏のような光景だった。

正男、浩二、ザトシ、クリス、澳門とジャック、そしてバルキス・・・。
ちなみにディレイルは基地の外で待機している。



指令室に戻った彼らを出迎えてくれたのは見慣れた仲間たちだった。


源剛:おお、戻って来たか。無事でなによりだ。


正男:源剛さん・・・スミマセン・・・。


源剛:謝らなくていい。全員そろって戻って来ただけで俺は満足だ。


正男:・・・そう、ですね。


ゼイラ:おうおう。ヴァックならまたこれから探せばいいじゃないか。


澳門:ああ。ヴァックの死亡を確認しないと安心はできないからな。


源剛:ところで、そっちにいるハットの男は誰なんだ?


と、源剛は指令室の壁に背中を預け、腕を組んでいるバルキスの方を見やった。


浩二:バルキスのことですか。


正男(皆より一歩下がって一匹狼気取るとか、どことなく啓鬼郎(※第九章参照)に似てるな・・・。)


澳門:ってかあれ、源剛さんバルキスと会ってませんでした?


源剛:? 会ってないが?


未名乗城での戦いでは源剛とバルキスは同じ建物にこそいたが
バルキスと直接は会っていない。それどころか顔を合わせる前にバルキスは未名乗城を撤退してしまったのだ。


ザトシ:ああ、ミナノリジョーでの戦いですか


澳門:オダ○リジョーみたいに言うなw


バルキス:・・・正男、俺の事は正直に話してくれて構わないぞ。


バルキスが小声で正男に耳打ちをしてくる。


正男:隠してても仕方ないし、全て話すさ。


正男:源剛さん、ゼイラ、俊寛、そして他のみんなも聞いてほしいことがあるんだ。


源剛:どうした?改まった顔をして。


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正男はバルキスのことを全て話した。
ZECTがWRACから奪った遺伝子で人造人間を作ったということ。
その遺伝子はラムスのものであるということ。

つまり、バルキスはラムスの遺伝子によって造られた存在だということ。
そしてあくまでもラムスの遺伝子を受け継いでいるだけでラムスと同じ存在ではないということ。


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澳門:そうか・・・だから俺たちに見覚えがある技を使ってたのか・・・!!


ザトシ:ディオ・ストーム何とかっていうのはラムスの技だったしな。


クリス:確かに、考えてみれば辻褄が合うわ!


源剛:ふむ・・・なるほどな・・・。


バルキス:・・・・・・。


源剛:どうだ。俺たちが出会ったのは恐らく必然だろう。
     これから阻止軍で働いてみる気はないか?


バルキス:気持ちは有難いが、遠慮しておこう。
        俺はZECTの技術によって造られた以上、このサイトの物語にいてはならない存在だ。


源剛:そうか・・・。


正男:・・・。


源剛:正男。まだ俺たちに言いたいこと、あるんじゃないのか。


正男:・・・?何の話ですか。


源剛:正男だけじゃない。浩二、ザトシ、クリスもそうだが・・・
     行くんだろ?次の世界に。


正男:気付いていたのですか・・・。


源剛:この世界のことは俺たちに阻止軍に任せておけ。それよりもお前たち4人はやるべきことがあるはずだ。


正男:わかりました。俺たち、必ず世界と俺たちの身体を元に戻して、そして・・・
     『光る球』の正男として、必ず戻ってきます!


クリス:私も、必ず戻ってきて見せます。


浩二:僕も


ザトシ:俺も俺も!!


源剛:はいはいw


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〜基地の外〜


正男たち4人とバルキスは外に出た。

外は青空。
いつのまにか朝になっていたらしい。


ディレイル:やっと出てきたか。


ディレイルが入り次付近で壁に背中を預けながら待機していた。


正男:バルキスはこの後どうするんだ?光る球に居てはならない存在というのなら
    俺たちと一緒に世界を巡る旅でもするか?


バルキス:いや、さっき源剛殿も言っていたが、それはお前たち4人でやるべきことだ。
        こんなこと言うのもおかしな話だが、それこそがお前たち4人の物語なんだと俺は思うぞ。


浩二:僕たちの・・・


クリス:物語・・・?


バルキス:ああ。お前たちの中にはもちろん、『光る球』の登場人部としての『力』や『記憶』があるように
       他のサイトでの力や記憶も沢山存在しているんだろうが、その中でも『異世界を巡る物語』の登場人物としての何かもある筈だ。


ザトシ:おいおい、それってちょっと無茶苦茶じゃないか?w




バルキスはこう言いたいのだろう。
全ての異世界に存在するレギュラーとしての記憶と力を受け継ぎ
様々な異世界の壁を越えて、世界混雑の危機から世界1つ1つを救っていく・・・
それこそが、"Masao World Adventure"としての4人の物語だと。

正男も、そしてディレイルもそれに気付いた様子。




ディレイル:…いや、バルキスの言い分はある意味間違っていないかもな。


クリス:えっ?


正男:もっとも、俺たちのこの旅も終わりに近づいているみたいだけどな。


浩二:それってどういうこと?


正男:そうか。あの時浩二はいなかったっけか。
    光る球の世界に着いたばかりのころ、ヨシキから連絡があったんだが
    この世界以外に互世界がパラドックス(矛盾)を起こすような出来事は起こっていないとのことだ。


ザトシ:ああ、そういえばそんな話してたな。


正男:つまり、世界混雑は収まりつつあるということだ。


浩二:じゃあ、もしかして・・・!


クリス:ええ、もしかしたら後は元凶を突き止めれば全て収まるというわけね!


正男:恐らくな。


ディレイル:その前に確認したいんだが、バルキスはこの後どうする気だ?


正男:そういえば、そうだな・・・。


ザトシ:そうだ、忘れてた・・・。


バルキス:しばらく旅に出ようと思う。とはいえ、俺は2つのサイトの力によって生まれた存在だからな。
       物語にパラドックスを起こさぬよう、誰とも接さないで生きていくさ・・・。





『光る球』の登場人物の遺伝子を基に、『IKYSTHEHOMEPAGE』の組織の技術により造られた存在ともなれば
これは2つの物語にパラドックスを起こさざるを得ないだろう。

バルキスはそれを承知していたからこその決断だった。
しかし・・・





浩二:・・・本当に、それでいいの?


バルキス:?


浩二:そんなの、さみしいじゃないか。他の誰と接することもなく生活を送るなんて・・・。


バルキス:仕方があるまい。これが俺に刻まれた運命だからな。


浩二:君は僕のよく知っている人の遺伝子で造られた存在なら、本当は共に苦難を乗り越える仲間が欲しいはずだよ。
    それなのに意地を張って、誰とも会わずに過ごしていくなんて、そんなさみしいこと、言わないでよ・・・!


正男:浩二・・・。


すると不意にどこからか声が聞こえてきた。





???:だったらWPSで働くってのはどうだい?




ディレイル:レイド!!


一同が一斉にレイドと呼ばれた男のいる方へと振り向いた。


ディレイル:機械兵工場付近にいた機械兵を破壊したのはお前だな?
        俺たちを助けるとは、一体どういう風の吹き回しだ?


レイド:そこにいる人造人間にとってのお宝がどういうものか、見てみたくてね。


バルキス:・・・?


レイド:バルキスといったかな。キミは破壊阻止軍にいちゃいけない存在だって分かってるみたいだけど
      それでもキミは、本当は仲間が欲しいんじゃないのかい?


バルキス:俺が・・・仲間を欲す・・・?


レイド:ラムスの遺伝子のせいか、仲間思いである性格のようだけど、キミには仲間がいない・・・。
     だったらキミはWPSで仲間を作る機会を作るべきだ。


ディレイル:・・・・?


レイドがこんなことを言うなんて・・・一体何があったというんだ?
そこでディレイルはあることに閃いた。

だがそれはまた後でレイドと2人で話すこととして…。


バルキス:仲間・・・か・・・。確かに、そうかもしれないな・・・。


バルキスは唸るように目を閉じて考え込む。
そして再び目を開くと、そこには決意の光がみなぎっていた。


バルキス:決めた。お前たちが紹介してくれるというのなら、俺はWPSに入るとしよう。


レイド:紹介ならディレイルがしてくれるさ。
     さて、僕はそろそろこの世界を後にすることにしよう。


ディレイル:ちょっと待て!


レイド:どうした?


ディレイル:紹介はいいが、お前に聞きたいことがある。


ディレイルは改まった様子でレイドに問いだす。


ディレイル「お前はどうしてバルキスの為にそこまでする?
       レニウスから話は聞いたが、もしかしてさっき会ったときに奴に喰らった説教で何か考えを改めたのか?」


レイド「別に?只の気まぐれだよ。」


と、質問を軽く受け流すレイド。
でも、ディレイルは僅かに思った。

レイドは確実に、少しずつではあるが、変わり始めている、成長していると──
もっとも、レイド自身はその事実に気づいてはいないのだろうが。


レイド「もういいかな?僕はそろそろ失礼するよ。」



そういってレイドは水彩のような模様をした壁、異次元ゲートを出現させ
その中に入ろうと歩を進めるところディレイルが呼び止める。





「おい」





その言葉にレイドは向きを変えぬまま歩を止める。
そしてディレイルは問う。


ディレイル「お前はこれからどうするつもりだ?」



レイド「決まってるだろ?」



当然のように言葉を吐き捨てたレイドはやがてこちらを振り向き・・・




レイド「次の世界のお宝を探しに行くのさ。



レイドは異次元ゲートに入り込み、そのゲートごとレイドは姿を消した。
今度こそ、次の世界へと旅立ったのだろう。



───レイドがバルキスに対し、『仲間がお宝』などと言ったのは
所詮"この世界でのお宝"に過ぎないのだろうか。

レイドにとっての"次の世界でのお宝"というものの中に『仲間』は含まれていないのだろうか。



ディレイルはそうは思わなかった。
レイドは少しずつだが確かに成長している。そう確信していたからだ。

だからいつかきっと、また仲間という存在が掛け替えのないものだと分かってくれるはず。
そう信じて───



バルキス「皆、迷惑かけてすまなかったな・・・。」


正男「いいってことよ。お前とこうして分かり合えただけでも俺は嬉しいぞ。」


バルキス「俺もそろそろ行くとしよう。WPSに入れば、きっとまた会えるだろう。」


ディレイル「とはいっても、恐らく世界混雑とはあまり関わりのないところに飛ばされる可能性が高いがな。」


ザトシ「そういえばWPSって幾つ支部が存在するんだ?
     中央司令部、北方司令部、あとヘルメスのいる東方司令部のことは知っているが…。」


ディレイル「正直、俺らも分からない。司令部は無数にあるからな。
        下手をすれば世界の数だけ、いや、それ以上あるのかもしれない。」


クリス「そんなにあるの!?私、てっきり5つくらいかと思ってたんだけど・・・。」


ディレイル「それだけしかないなら世界を保護なんてとても出来たもんじゃない。
        まあ、その無数にある司令部のどこかに所属するわけだから、恐らく俺らと一緒ってことはないだろう。」


浩二「そんな・・・」


バルキス「案ずることはない。お前たちがピンチになれば、俺は必ず駆けつけよう。
       例えそれが異世界の果てだったとしても、それが俺の血に秘められた"勇士"としての信条だからな。
       きっとラムスもそう望んでいるはずだ。」


正男「ラムス・・・。」


バルキス「さらばだ。異世界を巡る者たちよ!
       共に戦うその日までのお別れだ。」


その言葉を最後にディレイルとバルキスを異次元ゲートが包み込み、そのゲートごと姿を消した。






正男「そういえば何かいつのまに俺らのセリフを囲むのが『:』じゃなくて普通のカギカッコになってるな」


クリス「確かに・・・光る球の世界だとずっと『:(ダブルコロン)』だったはずなのに。」


ザトシ「まずいな・・・それはきっと世界混雑の影響が強くなってきてるってことだな」


正男「あぁ、早く元凶を突き止めないとな。」


浩二「その話題でシリアスになれるってすごいな。普通は管理人がめんどくさくなったってノリで終わるでしょww


正男:確かになw


ザトシ:あ、また戻ってる。




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そして、正男達4人のこの世界での使命は果たされた。
その使命とはベイルの力を用いて造られた人工ベイルを倒すことだったのだろう。
3つのサイトの技術により生まれた存在であるため、物語に矛盾を来たさないための使命でもある。

やがて人工ベイルは破壊され、バルキスもWPSに入ることとなり
無事に世界にパラドックスが起きることなくこの世界での物語はきっと今後も続いていくことだろう…。



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♪『Miles Edgeworth: Ace Attorney Investigations 2』より
from Hamienet

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