中間ストーリー39
〜収まる混雑〜
 (3/3)


あれからどれくらいの月日が流れたのだろう。
もっとも、それぞれ別次元なので月日そのものも別々なのだろうが。

ディレイルの紹介によりバルキスはWPS入会試験に合格。

所属先は『風雲司令部』。
無数ある支部のうちの1つにしか過ぎず、そこは直接世界混雑に関する任務は任されていない。
ヨシキ達とバルキスが会うことは恐らく殆どないだろう。


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〜〜WPS中央司令部〜〜


ライ「どうですか?ヨシキ、ルドアの反応は見つかりましたか?」


司令室でヨシキがモニターとにらめっこし、反応を捜索している。
だがそれらしき反応は見つからない。

『光る球』の世界ではベリアルとかルシファーとかいう男に戦いを挑まれたらしいが
面倒だったのか、ルドア達はすぐに他の世界に逃げたらしい。
当然、ベリアルとかいう奴に他次元に渡る力はないのでそこまでだった。


ヨシキ「反応は見つからない・・・。」


ライ「参りましたね・・・世界混雑は大分収まり、後は元凶を突き止めるだけというのに。」


ミハリア「ルドアの後ろにいる人物・・・本当にいるのでしょうか。」


レニウス「レイドと話をしたときにはルドアが通信機で『リカルド』と呼ばれる人間と話をしていたと聞いたけど」


ハル「それがラルズ総監かも知れないという話じゃったな。」


ヨシキ「いっそ、カマを掛けてみるか…。」


レニウス「ちょっ…、ヨシキ意外と大胆だな;」


ヨシキ「光る球の世界に現れたとかいうヘインド山賊という連中に比べれば大したことはないんだがな・・・」


ディレイル「そういや光る球で思い出したんだが、あの工場の爆発カウントダウンが入った時
        確かヴァック達はむしろ工場の奥の方に進んでたよな。あれってどういうことなんだ?」


ヨシキ「あの時レーダーではヴァックやその仲間があの工場の裏口らしきところからの脱出を確認している。
     それも工場から出た後は人間の足じゃないスピードで工場から離れて行ってたな。」


レニウス「てことは・・・」


ヨシキ「恐らく、潜水艦で脱出したのだろう。」


ディレイル「潜水艦で?」


ヨシキ「あの工場の近くには湖があっただろ?どうやらあそこを通して脱出したみたいだ。」


ディレイル「なるほど・・・。」


ミハリア「それでヨシキ、ラルズ総監にカマを掛けるというのは本気なの?」




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「その必要はない」




冷めた口調で先ほどとは全く矛盾した言葉が返ってきた・・・。



ミハリア「ヨシキ・・・?どうしたの・・・?急に声のトーンなんか変えて」



ヨシキ「いや、喋ったの俺じゃないんだけど・・・」


「俺だ。」



声の元はモニターの音声から聞こえてきた。
どうやらこの中のメンバーではないらしい。



レニウス「ルドアか!!」


「ご名答w」


冷たく笑ったその声がモニター音声を通して聞こえてくる。


ライ「わざわざWPSの中央司令部まで通信とは、一体何の用ですか」


ルドア「お祝いだw お前らは見事に世界混雑を収めることに成功したようだ、おめでとう!!w」


ヨシキ「ありがとう」


ディレイル「礼なんか言ってる場合かよ!!」


ヨシキ「それよりも気になるのは方法だ…ルドア、どうやってWPSに通信を繋いだ?」


ルドア「俺この場にいるのは俺とエリスのみ…
      だが、その気になれば仲間を作ることなど容易いことなんだよ。」


ミハリア「仲間・・・?貴方の場合は"駒"としてしか見ていないでしょう・・・?」


ライ(仲間を作る・・・どこかのサイトの世界の人間を味方に付けたのか、それとも・・・)


ライは咄嗟にヨシキの方を見る。
ヨシキもそれに気が付いたようで、ライの瞳をみつめ、訴えの内容を察する。
能力を"見抜く"能力を持っている彼ならきっと訴えも理解してくれる、そう思ったのだろう。

ヨシキは"分かった"と言わんばかりにほんの軽く頷き、目線をルドアの写るモニターに戻す。


ルドア「おっと、最後に1つだけ言っておこう。世界混雑が収まりつつあるからと油断しないことだ。
     後は俺を倒せば終わりと思っているのだろうが、それもそう簡単じゃないということを覚えておくんだな。」


ハル「なに・・・?」


ルドア「さらばだ諸君、検討を祈る。」


と、そこでモニター通信は途切れた・・・。


ライ「・・・どうやら、そろそろ動き出さないといけないようですね」


ライは指令室を退室しようと出入口へと向かう。


ディレイル「待てよライ!どこへ行く!!」


するとライはこの状況には合わない、あきれるような一言を発する。


ライ「ゴミを分別しに行くんですよ。


ディレイル「こんな時に・・・しかも分別だけかよ・・・。」


ライは目線をヨシキに写し・・・


ライ「ヨシキ、手伝ってくれますか?」


ヨシキ「わかった。」


ミハリア「ちょっと待って!だったら私も行くわ。」


どうやらミハリアもゴミの分別の意味に感づいたようである。


ハル「おい!こんな時に何を考えて...」


『悪いが』


ハルが怒り気味に問い詰めるがその言葉の途中でヨシキの『悪いが』の一言により遮られた。


ヨシキ「悪いが、ここは俺たち3人に任せてくれないか?すぐに終わらせる。」


ハル「だが!」


ディレイル「なるべく早く戻ってこいよ」


ハル「おま・・・」


レニウス「ハル。とりあえず信じよう、ヨシキ達を」


ヨシキ「すまない・・・」


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〜総監府 総監室〜


ラルズ総監は室内の中心にある総監席にて机上にある書類とにらめっこし集中している。
ジオン補佐官もその傍らにある席で珍しくパソコンと向き合って仕事をしている様子だった。

ラルズは一旦手を止め、息抜きするようにジオンに話しかける。


ラルズ「ジオンよ・・・少し休憩をしないか。」


ジオン「俺にそんなこと言っていいんすか?いつもサボってるんですよ俺」


ラルズ「まあそういうな。たまにはお前ともゆっくり話をしたい」


ジオン「世界混雑のことですか?」


ラルズ「なぜそう思う?」


ジオン「世界混雑は大分収まったらしいじゃないですか。
     何かつまらんな・・・もう少し面白そうなのが見られそうだったのにな。」


ラルズ「レギュラーの4人と各司令部が頑張ってくれてるお蔭で意外とスムーズに事は終わりそうだ。本当に優秀な部下を持ったよ私は。」


ジオン(なぜ急に休憩して話をしようなどと言い出す?何かを企んでいるのか・・・)


ラルズ「さて・・・俺もそろそろ、本格的に行動しなければならないな・・・


ジオン「・・・? どういう事です?」


ラルズ「・・・」


と、その次の瞬間・・・
ラルズは背後から右腕でジオンの首を絞め始めた。


ジオン「な・何をなさるのですか・・・!!」


ラルズ「忠告したはずだぞ。私に対する侮辱は控えろとな!!」


ジオン「くっ・・・!!」


その時だった。


総監室の出入り口である自動ドアが開き、扉の奥にはヨシキを中心にライ、ミハリアが立っていた。


ラルズは何に驚いたのか、目を見開いた。


ラルズ「キミたち・・・」


3人は総監室に入室し3歩ほどで足を止める。
出入口からは近いので自動ドアは開いたままだ。


ヨシキ「どうやらリカルドの正体がWPSの人間だというのは本当だったようだな」


ライ「ヨシキの言うとおりですよ、例えどんな理由があろうとも内通者は排除しなくてはなりません。」


ミハリア「ちょ、ちょっと待って!どういうこと?それってやっぱりラルズ総監が・・・」


ヨシキ「・・・。」


ヨシキはポケットから銃を取り出し、それをラルズ総監に向ける。


ラルズはそれを見て一瞬強張るがやがて、ヨシキの"ある行動"を見ることにより表情が和らぐ。


何と、ヨシキは銃先をジオンに変え、足を一発撃ったのだ。





ジオン「ぐあっ!!!」





その様子を見たミハリアは息を飲み、右手で口元を抑えた。
しかし、ライはそれを見ても驚く様子はなかった。彼は恐らく分かっていたのだろう・・・真実を。
その真実とは、次のヨシキの言葉が物語った・・・。







ヨシキ「リカルドの正体は貴方ですね・・・




                                                ・・・ジオン補佐官。





ジオン「!!」




ミハリア「そんな・・・!!」



ライ「総監は・・・」



ライは視線をラルズとジオンから逸らさないままミハリアに語る。



ライ「総監は、ルドアと繋がっている人間を暴くためにずっと一人で捜査を続けていたのでしょう。
    恐らくは、ジオンがリカルドの正体であることが今分かって、彼を捕獲しようと今作戦を実行したのでしょうね。」


レニウス「なるほど、ライの言ってた"ゴミの分別"ってのは内通者を暴くことだったんだな」


ミハリア「貴方たち!!」


ヨシキ達の背後にはいつの間にかレニウス、ディレイル、ハルがいた。


ディレイル「ヒデーじゃねえか。俺等に相談もナシに」


ハル「お主らだけに手柄は譲らんぞ。」




左足を撃たれたジオンはその場に蹲っていたが
両手をついて、少しよろめきながらも立ち上がる。



ジオン「ククク・・・よくわかったな!!ゴミ共!!!!!!
    そうさ。俺こそがリカルドだ!!






ヨシキ「・・・どうして、世界混雑を始めたんだ?」


リカルド(ジオン)「全世界を支配するためだよ!!ルドアが丁度いろんな世界の力を吸収したいと言っていたのでな。
             奴らと手を組み、俺は総監府に与えられたWPSの最高システムを使って世界を融合させたってわけだ。」


ディレイル「チッ、随分と面倒なことしやがるぜ・・・!!」


ハル「そんな理由で世界を融合させたというのか・・・?」


ライ「しかし、逆に言えば今までWPS内でそのような事件が起こらなかったのが不思議なくらいですよ。」


ヨシキ「そう簡単に世界を融合させることが可能じゃ困るだろう。きっと何か相当難しい技術も必要だったんだろうな。」


レニウス「そうなのか?」


ヨシキ「多分」


レニウス「多分て・・・。」


リカルド「レギュラー4人が物語同士のぶつかり合いを阻止する旅をしていたみたいだが
       どうやらそれが"人柱としての役目"だと気が付かなかったようだなぁ・・・?」


ミハリア「人柱ですって・・・?」


ライ「説明して頂きましょうか、ジオン・・・いえ、リカルド。」


リカルド「正男、浩二、ザトシ、クリス。4人の身体がそれぞれ融合し、"レギュラー"が誕生した。
       その影響で無数存在する"スーパー正男"の世界もが融合し、それによって世界と世界を結ぶ壁に穴が開いた。」


リカルド「だがこのWPSの最高システムを持ってしても世界と世界を自由に行き来させるのは難しかったのだ。」


ヨシキ「そこで正男達4人が利用されたってわけか・・・」



リカルド「正男達4人、つまりレギュラーが次々と正男サイトの世界を旅することによって
       その旅した世界の範囲ならばルドア達も自由に世界の壁を越えられるという仕組みとなった。WPSのメンバーじゃなくてもな。」



レニウス「嘘だ!!!!!!!!!補佐官が・・・いつもサボってるけど決して悪いことはしない人だった・・・それなのにどうして・・・!!!」



感情的になったレニウスに冷たく言い放ったジオン・・・いや、リカルド。





リカルド「全くの別次元の別世界にいた人間をそう簡単に信用する方が悪い。」



途端、レニウスの脳裏にレイドの言葉が響いた。





『でも所詮は全く違う世界の人間同士だろ?
 しかも互いに素性を明かしてないというのに、仲良しこよしするのが嫌いなんだよね。』




レニウス「くっ・・・!」




リカルド「ま、誰を信じて誰を信じないかは勝手だが、念のためにこれだけは言っておこう・・・
















                                    ・・・俺は洗脳などされていない。正気だ。







そう言い残して"あの異次元ゲート"が現れては彼を包み、リカルドは消えた・・・。



ディレイル「逃がしたか・・・!!」



レニウス「そんな・・・ジオン補佐官が内通者だったなんて・・・!!」





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ヨシキ「仕方がない・・・だが、今後は今まで以上に厄介になりそうだな」


中央の6人はラルズ総監の方をみる。


ラルズ「みんな・・・すまない・・・リカルドの正体を突き止めることは出来たが、生憎私も力不足だったようだ・・・。」


ミハリア「いえ、仕方ないですよ・・・ルドアを仲間にする程の人ですから・・・」





空気が重くなり、その重さに一番押しつぶされている人物がここに、いた・・・。




レニウス「・・・・・・」






───まさか、WPSに裏切り者がいたなんて・・・

同じグループではないとはいえ、ジオン補佐官はいつも仕事サボってるのは分かるし
部下からもあまり頼りにされていないダラしない人だ。

でも、悪いことに手を染めるような人だとは思っていなかった。それなのに・・・!!



『でも所詮は全く違う世界の人間同士だろ?
 しかも互いに素性を明かしてないというのに、仲良しこよしするのが嫌いなんだよね。』



くそっ!!やっぱりお前の言うことが正しいのか・・・?レイド───







その一方で、重い空気に惑わされず総監や他の仲間に今後について話を続ける者がいた。
しかしながら、レニウスが涙ぐんでいることにもいち早く気付いていたようだった。








ヨシキ「・・・・・・。」










第十一章へ続く・・・。


♪Moonlight Fantasia
夏イメージ より
from Tam Music Factory


♪Dancers #2
from Nerve(雑音空間)


♪Grid Seeker(Sad Arrange ver.)
タイトー『グリッドシーカー』より
from オリジナル


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