中間ストーリー26
〜見えない爆弾〜
 (3/5)




突如現れた人影は両手を左右に広げると、そこからは炎が現れた。
その炎の明かりにより、人影に色が付いて見えた。


背中まで伸びている蒼き髪。
そして鋭い目つきをしているこの女性。


彼女こそ、北方司令部の将軍ニュクスである。


クリス「貴女、もしかして北方の・・・?」


ニュクス「いかにも、私は北方司令部の主将ニュクスだ。
      そういう貴様等はザトシとクリスじゃないか。いい的が二人も見つかるとはw」


ザトシ「話はヘルメスから聞いていたが・・・
    まさか、この女が北方の主将だとはな」


ザトシはニュクスを睨みつけた。
対するニュクスは、余裕の笑みを二人に見せ付けていた。


ニュクス「実力に男も女も関係ない。そうだろう?世界を融合させた者達よ
     ソーラー・エクスプロージョン!!


ニュクスが唱えると彼女の両手の平から高熱を発し
そこから激しく燃え盛る炎が現れた。

ニュクスは両手をザトシを焦点に炎を放つ。


ザトシ「うおっ」


ザトシが避け、炎は通り過ぎた。
その炎は草へと移り、光と共に熱が辺りに広がり始めた。


クリス「大変!このままじゃ山火事になってしまうわ
    急いで火を消さないと・・・。


ザトシ「そうだな。こいつは俺がなんとかするからクリスは火を消して行ってくれ」


クリス「分かったわ」


二人がうなずき合うと、クリスは属性で辺りの火を消し始めた。


ザトシ「貴様、炎の属性か・・・。てことは、氷属性を持つクリスを省いてしまうのは辛いな」


ニュクス「どのように捕らえるかは貴様等次第だが・・・
     今の私の力はほんの一部にしか過ぎない。」


ザトシ「どういう意味だ?」


ニュクス「こういう意味だ。
     アブソリュート・ゼロ!!


ニュクスが"絶対零度"の名を持つ呪文を唱えると
激しい吹雪と共に大量の氷の塊がザトシ目掛けて撒き散らかされる。


ザトシ「今度は氷だと・・・?」


ザトシは驚きを隠せず絶句した。
炎と氷の両方を操ったのだ。


ニュクス「知っているか?熱が発しているとき、分子はどのような状態なのか」


ザトシ「何が言いたい?」


ニュクス「"高温"というのは分子が高速で活動している状態のことを指す。
     逆に絶対零度とは、分子が全く活動していない状態のこと・・・。」


ザトシ「まさか、お前の能力は・・・」


ニュクス「左様、私は単純に炎や氷を発動させているのではない。
     分子の動きを調整することでこれらの現象を発生させる。
     それこそが私の能力・・・





     分子支配モレキュラーコントロールだ。


分子支配・・・。


そもそも熱というものは分子の運動エネルギーと解釈していいだろう。

例えば、たくさんの分子がぶつかり合いながら運動エネルギーをやりとりし
少しずつ分子が高速移動することで温度が上昇する。

逆に運動エネルギーが低く、分子の活動が低速の場合は温度が低くなる。
そして、分子がピクリとも動かない状態を、絶対零度という。

彼女はその原理を自由に操り、高温や低温を巻き起こしたのだ。



ザトシ「・・・どうりで熱に関する属性ばかりを扱えるわけだ
    だが、そこまでわかってしまえばこっちのものだ。
    逆に言えばお前は熱を上下させることしかできないことだしなw」


ニュクス「果たしてそんな余裕などあるのか?
     例え貴様の予想が当たっているとしても、私に勝つことはまず不可能・・・」


ザトシ「不可能だ?自分が将軍だからといって調子に乗ってるようだが
    俺だって無数の世界での力をも同化してるんだぜ?勝敗など決まっていない筈だ」


ニュクス「私の力を思い知ってもそんな口が利いていられるのか?」


ニュクスは即座にザトシの懐へと入り込み、とても女性の動きとは思えぬ拳で殴りかかろうとする。
ザトシは銃を取り出し、対応するが気付けばニュクスに銃を掴まれていた。
そして、ザトシが持っていた銃は瞬時に溶けた・・・。


ザトシ「馬鹿な!俺の銃を一瞬で溶かすだと・・・?」


ニュクス「この通り、私は通常の炎属性よりも遥かに高温を出すことができる。
     それはどうしてか、分かるか?」


ザトシ「・・・」


ニュクス「さっきの話を聞いてなかったのか?
     私は分子を自由に操る能力を持つのだ。これで言うのは三度目だぞ。
     その話を貴様がどのように解釈したのかは知らないが
     私は分子の運動を限度なく操ることができる。つまり・・・





     私の熱は無限大なのだ。


ザトシ「・・・嘘だろ?手のひらを差し出すだけで」


ニュクス「残念だがもう既に私の炎はただの炎ではない。氷も同様だ。
      私は手のひらをかざすだけで、太陽の如くあらゆる物質を溶かすことができるのだ。
      あきらめろ、お前はここで死ぬのだ!」


???「"ここで死ぬ"やと?・・・
   ふざけるな!殺さずに捕らえるというのが約束だったやろ!
   そもそも"殺すのが反対ならまずは奴等を捕らえるべきだ"と言ったのはニュクス、お前や!」


ニュクスの後方からごっつい声がした。
ニュクスが振り向くと、そこにはホトケ丸、ヘルメス、そして正男が立っていた。
クリスもこちらに気が付き、そちらへと目線を追いやる。


ニュクス「貴様はホトケ丸、その言葉を吐いているということは私を裏切るつもりか」


ザトシ&クリス「正男!ヘルメス!」


正男「大丈夫だったかザトシ、クリス。
    話は全てそこにいるヘルメスって奴から聞いたぜ。
    どうやら北方司令部の主将がこんな所で暴れまわっているらしいな」


正男は言い終えるか否か、ニュクスをにらみ付けた。


ニュクス「正男まで加わってくるとはw
      これは大いなるチャンスとでも言うべきだな」


正男「悪いが俺たちはお前の餌食になるつもりはない」


ニュクス「そうか、ならばまず私の力をみるがいい」


ザトシ「正男!そいつは分子の動きを自由に操る能力者だ!
     無限的な高温と絶対零度を繰り出してくる、気をつけろ!」


正男「わかった」


正男は頷き、再び顔をニュクスへと向ける。


ニュクス「確かに私は分子の動きを操る能力を持つ。それは無限大に熱を上げることができれば
      逆に分子の動きを停止させ、絶対零度を作り上げることもできる。
      だが、その能力もほんの一部でしかない


ザトシ「何だって?」


ニュクス「分子の能力を自由に操ることができる。
      その能力が単純に温度を変化させられるだけだと思うな


ニュクスが最後の文字を言うと同時に両掌で大地を叩いた。
すると、正男の真下の土が膨らみ丸く裂け
火薬こそなかったが、正男の踏んでいた大地は地雷のように爆発した。

正男はその衝撃で飛ばされ、落下で地面は正男を叩きつける。


正男「いてっ!貴様・・・」


ニュクス「分子を自由に操れるということは、物を通し、振動を敵まで届かせることもできる。
      温度を上下させるだけではなく、動き方までも指定することが可能。
      そのことを計算に入れ兼ねるようでは、相手にならん・・・」


一方、ザトシ達は・・・


ザトシ「あれではまずいぞ・・・俺たちも援護したほうがよさそうだな」


ホトケ丸「ニュクス相手に割り込むのは危険やで」


クリス「だからこそ正男一人じゃ危険なんじゃない
     私達3人も援護しましょう」


ザトシ「いや、それなら俺とホトケ丸だけでいこう」


クリス「え、どうして?私だけ待ってろというの?」


ザトシ「冷静に考えろ。今ここで一斉にかかって全員やられたら終わりなんだぞ
     誰か一人でもWPSに報告するような奴が残ってないとダメなんだよ。
     俺らは絶対に死なない、死ぬわけにはいかないから・・・。」


クリス「分かったわ・・・。」


ザトシ「よし、そうと分かれば実行だ」


〜〜


正男は立ち上がる。


正男「振動は物を伝わって届くということか、ならば・・・」


正男は鉄の床からなるフィールドへと移った。

ちなみにこの鉱山、先程のステージの通り
土が地面になっている部分と鉄が地面になっている部分とがあり
今回の戦いでは何かと都合がいい場所だ。


正男「ここは鉄の床。
    ここで戦うとすれば、物を通して振動を届ける。などということは出来ないはずだ
    これで貴様の攻撃手段は・・・」


ニュクス「残念だが減りはしない


ニュクスも鉄の地面へと移動し、両掌で大地を叩いた。
するとニュクスの周りの鉄の床から、無数の触手が湧き出てきた。

その触手、よく見なくとも鉄で出来ているということが分かる。
その全ての触手の先端部分が刃へと変化し、次々と正男を襲う。


正男「何だと・・・?」


無数の刃が正男を襲った。
正男は動揺しつつも下がりながら、雷の剣で攻撃を防ぐ。
その衝撃で小さな雷が火花のように散った。

正男は次々と迫り来る触手からなる鉄の刃を確実に受け流し
ゆっくりと間合いを近づけていった。


ホトケ丸「よし、今や!
      惑星砕き!!


ホトケ丸はニュクスの近くで這い上がり
地面に向かって拳を向け、異様な重さとスピードで衝突する。
鉄だったので地面がくだけることはなかったが、激しい揺れと共に凹みが周囲に広がった。


ニュクス「そんなことで私が怯むと思っているのか」


一瞬の地震が発生している間、ニュクスは飛び上がっていたため
被害を受けることはなかった。宙に浮かんでいるニュクスは地面に落下していく状態だった。


ザトシ「よし、今なら避けることはできないだろう
     アース・デリンシャー!!


ザトシは遠方からニュクス目掛けて地の銃を連射する。が・・・


ニュクス「そんなつまらない作戦など、私には通用しない。
      大人しくそこで見ていろ」


ニュクスは落下しつつも左手を翳すと、地の弾は全て一瞬にして溶けた・・・。


ザトシ(大体予測はできてたが、やはり効かなかったか・・・。)


ニュクス「ソーラー・エクスプロージョン!!


弾を溶かしたと思えば今度はザトシ目掛けて太陽が放たれた。
ザトシはギリギリでかわそうとしたが、太陽の端に当たってしまい
信じられない高熱が漂った。
ザトシはあまりの高熱に意識が朦朧とし、その場で跪いた。


ザトシ「くそ・・・ルドアと同等と聞いてたものだからどのくらいかと思っていたが
    ここまでレベルが違うというのか・・・!!」


ニュクスは余裕な顔をしながら着地した。


クリスはザトシの元へと向かい、氷の技で辺りの気温を下げた。


ホトケ丸「おい、大丈夫か!?」


クリス「ザトシ!大丈夫?」


ザトシ「大丈夫だ、心配するな・・・。」


クリス「よかった・・・。でもあの攻撃を食らってたら・・・。」


ザトシ「余計なことは言うな、とりあえず作戦を立て直そう」


ホトケ丸「その体じゃ無茶や!お前は少し休んどれ!」


と、その時!


???「ヴァイオニック・プレス!!


ニュクスの周りの空気が圧縮された。


ホトケ丸「イーグルアイ!お前無事だったんか」


ニュクス「ほう・・・貴様まで裏切るか」


ニュクスは頭痛に耐えながら言った。


イーグルアイ「貴様は約束を破った。ならそれ同等の反逆は許されて当然だよな?
         もっとも・・・、その代価は相当でかいがな!


ニュクス「安心しろ、そうでなくともその反逆は全て水の泡になる。
      アブソリュート・ゼロ!


突如温度が下がった。
それと同時に圧力が下がり、イーグルアイの攻撃は無効となってしまった。


イーグルアイ「なっ!」


ニュクス「貴様の属性は圧力・・・。同じ司令部で行動をしていた私にはよく分かる。
      だがいくら空気を圧縮しようとも、私の前では全て無意味なことだ」


イーグルアイ「貴様・・・、圧力の仕組みを理解しているのか」


イーグルアイは動揺しつつもニュクスに問う。


ニュクス「勿論だ。いくら保護協会とはいえ、いつ裏切られるか分からんからな。
      貴様等の能力の仕組みなど、事前に調べている」


ニュクスは二人を挑発するかのように公言した。


正男「どういうことだ?ニュクスは一体どうやって圧力を無効化したんだ?」


ニュクス「そうだな・・・。分かりやすく説明すると
      例えばふくらませた風船があったとしよう、それを液体窒素で冷やすと
      風船の中の空気は急激に冷やされ、収縮する。
      そしてついには、空気の大部分を占める窒素も酸素も気体から液体に変わる。
      増してや私は"絶対零度"をも扱えるのだ。高風圧を無効化にするなど容易い事・・・。」


ちなみに、収縮しきった風船を液体窒素から出すと
液体になった空気は暖められて再び気体に戻っていく。
液体の空気と気体の空気では体積が数百倍〜千倍ほども違う。
そのため分子を自由に操るニュクスにとっては高風圧を無効化にするのは朝飯前とのこと。


ニュクス「私に弱点など存在しない、あきらめるんだな」


正男「くそ!こうなれば俺が正々堂々と食い止めるしかなさそうだな・・・」


ザトシ「いや・・・こっちはこっちで対策を考えておく」


----------------------------------------------------------------------------------


ザトシ「とは言ったが、どうやってあいつを止めるか・・・」


ホトケ丸「ザトシの必殺技でもピクリともしなかったからな。
     その方法を見つけるのは不可能に近い」


ザトシ「爆弾でも使えば高温で熱されて爆発して終了ってのもないだろうな・・・」


クリス「そうね、それを使っても爆弾を低温で冷やされて終わりだもの」


イーグルアイ「その爆弾が見えなければいけるかもしれないんだが、物理上不可能だしな」


ザトシ「"見えない爆弾"か・・・」





ヘルメス「見えない爆弾なら作れるぞ」


…。


……。


………。


一同「うそぉ───!


ヘルメス「"見えない爆弾"を作る方法はイーグルアイ、お前にある筈だ。」


イーグルアイ「俺に・・・?」


ヘルメス「ああ、今から作戦を説明する。皆、ちょいと耳を貸せ」


周りにいる全員
ザトシ、クリス、ホトケ丸、イーグルアイがヘルメスの元に集まり
ヘルメスは4人に耳打ちをした。


イーグルアイ「成る程・・・その考え、悪くないな」


ザトシ「悪くないというか、今度こそ絶対にいけると思うぜ」


ヘルメス「そうと分かれば、作戦準備だ」







次へ


♪No future
from nerve (雑音空間)

inserted by FC2 system inserted by FC2 system