中間ストーリー29
〜感情への怨み〜
 (2/2)


その頃…


ザトシ「ここだな?シャドウアーミーの本拠地は」


キドルに別れを告げたザトシとクリス。
そして正男を追うために付いてきたトラス。


トラス「急ごう!早くしないと兄さん達が!」


クリス「そうね、急ぎましょう。」


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啓鬼郎「ざ・残念だったな…、これで貴様等の野望もおしまいだ…。」


最後の力を振り絞って鎌をガウスに直撃させ
彼はうつ伏せの状態で鎌を持って倒れている。

一方、ガウスは腹に大きな傷を負いながらもギリギリ立ち上がれる状態だ。


ガウス「確かに、この状態で人間と戦うのは難しい…
     だが、ひとつ忘れてないか?


啓鬼郎「何?」


ガウス「覚醒をしているということは魔力だけは残っている。これで…テレポートだ!」


啓鬼郎「馬鹿な!!」


ガウス「残念なのは貴様のほうだw さて、私は儀式の準備をしてくるとしよう・・・。」


啓鬼郎「儀式だと…?貴様、一体何が目的だ!!」


正男「啓鬼郎!!」


正男と浩二が走ってきた。


啓鬼郎「お前ら……来るなと言っただろう!!」


浩二「この状況で何を言ってるの!」


ガウス「ふん、お前等も来たかw だがもう既に手遅れだw」


ガウスが両手を上げるとガウスの身体に雷が落ち
その閃光と共にガウスは消えた。


正男「くそ!逃げられたか!」


???「正男!!」


正男「ザトシクリス!それにお前は…」


浩二「トラス!」


トラス「兄さん!」


ザトシ「悪い、遅くなったな。」


浩二「どうしてトラスがここに?」


クリス「その話は後にしましょう。それより状況はどうなってるの?」


正男「実はたった今、ガウスに逃げられちまった」


啓鬼郎「奴はきっと屋上に行った。」


ザトシ「あれ?お前もしかしてケイキロウk...」


啓鬼郎「話は後だ!今はとにかく急げ!!早く奴の儀式を止めろ!!!」


正男「わかった!」


正男達5人は屋上を目指して階段を探しに走り出した。


ちなみに、この時まだ正男と浩二は
トラスが融合の話をザトシから聞いたことを知らない...


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〜Shadow Army 本拠地 屋上〜


空は全体的に蒼黒い雲に覆われ、まさに影の軍隊の本拠地として相応しい景色だ。

ガウスはそんな中、三叉槍を持ちながら両手を左右に広げる。


ガウス「さあ、儀式を始めようw


ここでこの世界の法則を説明しよう。

この世界は表世界と裏世界に分かれた構成になっている。
互いの世界の同じ物質が+と−のような働きをし、互いに引き合い、その物質は次元に引き止めていられる。

彼らは裏世界からやってきた者たちであり
表世界を乗っ取ることを目的にやってきたのだ。


今、ガウスは雷を落として覆われた雲に穴を開け、月を出現させようとする。
夜の12時、月光を浴びることで影が生まれ、黒い影が表世界を乗っ取るという仕組みだ。


まさに今、その儀式が始まろうとしていた。だが…


雲の色が変わった。


ガウス「…?」


???「ガウス、よくも我々支配者に背いたな。」


突如赤黒くなった雲と共に、不気味な声が聞こえた。
ガウスは見上げると、触手に黒き波動をまとわせる邪眼が降臨してきた。

しかし、以前の姿とは少々違っていた。

以前は大量な触手を背負っていたのだが
今は触手が少なくなっており、センクウザより少し大きいくらいにまでなっている。


ガウス「貴様!なぜ生きている!
     お前は俺が倒したはずだ!なぜ!!」


ヘル・ハデス「このヘル・ハデス様がそう簡単に滅びるわけがないだろう。
        それとも、死んだと思い込む程貴様は愚かなのか。」


ガウス「言わせておけば…!!」


ガウスが走った。


凄まじい速さで三叉槍を振り上げるがヘル・ハデスは以前より触手が少ないせいか身軽になっている。
そのため、技を見切っているガウスでもその槍を当てることはできず、ヘル・ハデスは容易く攻撃を避けた。


ヘル・ハデス「今のお前が私を倒すことなどできないだろう。
        魔 裁 剣 !!


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その頃…


ゼドル「随分と広い部屋だな」


先程啓鬼郎とガウスが戦った空間に出た。
壁はボロボロで倒れた地球防衛軍兵士が辺りに転がっていた。


ロベルト「酷い…一体誰がこんなことを…」


すると二人はある人物を目にする。
壁に寄りかかって腰を下ろしている啓鬼郎の姿をした男だ。


ロベルト「あれは…闇男さん!?」


ゼドル「あいつ…何でこんな所に倒れてるんだ?」


急いで二人は駆けつける。


闇男「お前等か…、実はガウスを仕留めかけたんだが逃げられちまった…」


闇男は傷口を押さえながら立ち上がる。


ロベルト「ちょ…、その体で立ち上がって大丈夫なの?」


闇男「俺は大丈夫だ。それより急ごう。早くしないと奴が…」


ゼドル「場所は何処だ?」


闇男「恐らく屋上だ。」


ロベルト「僕が闇男さんの手をひくよ。その体じゃ一人では動けないでしょ」


闇男「ああ、頼む…」


三人は屋上目掛けて走り出した。


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Shadow Army屋上…。

赤黒い雲に囲まれた中、正男達5人(正男、浩二、ザトシ、クリス、トラス)が走る。
その先には傷付いて倒れたガウスの姿が。


浩二「ガウス!!」


ザトシ「ガウス…?あれがガウスなのか…?」


正男「何でこいつが倒れているんだ…?」


どうして彼が倒れているのか皆は理解できなかった。
もしやテレポートする時に落ちた雷で間違って自滅してしまったのか?
と考える者もいたが、考える間もなく
空中から触手が少なくなったヘル・ハデスの姿が現れた。


一同「ヘル・ハデス!!」


ヘル・ハデス「δにχにα!なぜここにいる!」


元々この世界では浩二とザトシとクリスは支配者によって洗脳されていた。
その際に付けられた名前が浩二から順にδ(デルタ)、χ(カイ)、α(アルファ)というわけだ。
今は融合によって容易く洗脳が解けてしまっているが。


ヘル・ハデス「それにχ!貴様は自らの意志で我々に従うと言った筈だ。」


ザトシ「ああ?覚えてねえなあ。」


浩二「僕達はそう簡単にお前のいいなりにはならない!」


クリス「あたしだって!」


ヘル・ハデス「そうか。貴様等も所詮、愚かな人間共と同類だったというわけか。
        いいだろう。ならば話してやろう。全ての真相を!!」


正男「真相?」


ヘル・ハデス「この世界の法則だ。」


ザトシ「法則?」


ヘル・ハデス「この世界は表世界と裏世界に分けられる。
        表世界と裏世界の物質の質量やその構成は全て同じであり、互いの世界にある物質が次元に引き止めていられる。
        2つの世界の片方で少しでももう片方と違う事がある場合、2つの世界の均衡は崩れ、消滅する。


正男「何だって!?」


ザトシ「つまり片方の世界が無ければ、残った世界はあひゃひゃひゃやあああになるのか。」


クリス「ふざけてる場合じゃないでしょ!!」


浩二「そうなると僕たちには世界を破滅しようとする十八覇者という敵がいる。
    でも、それより早くShadow Armyを止めなければこの世界の均衡は崩れる。
    ってことは僕達は一番不利な軍ということじゃないか!!


正男「お前等支配者は一体何が目的だ?十八覇者まで作って…」


ヘル・ハデス「その言い方だと、我々がこの世界を滅ぼしにきたかのような言い方だが
        実際はその逆だ。この世界の均衡の歪みで固体化した『恐怖』で人類を支配し、新世界の復興へと導くのだ。
        人類が我々の奴隷となる、第二の世界をな。


一同「!!」


ヘル・ハデス「その計画を実行するために、潔く利用したのがShadow Armyというわけだ。」


するとガウスがうつ伏せの体勢のまま顔をヘル・ハデスのほうに向け
ぜいぜいと息をしながら峻厳とした焦りをヘル・ハデスにぶつける。


ガウス「貴様まさか…俺たちが十八覇者を裏切ってShadow Armyを経てることを想定してたというのか!?


浩二「うそ…」


ヘル・ハデス「左様。貴様が裏切ったとき、私は死を演技した。」


浩二「早くこのことをShadow Armyの人達に伝えないと!!」


???「その必要はねえ。」


突如、聞き覚えのある声が聞こえた。
ガウスにとっては極身近な声だった。
なぜならば…


正男「お前等は・・・、Shadow Army四天王!


炎影「結局7soulとかいう連中は俺らとは何の関係もないことが分かった。」


土影「結局無駄足だったわけよ。」


水影「そこで嫌な予感がしたのよ」


クリス「嫌な予感?」


風王(???)「そう、風が変わったんだ。
       我々は本拠地から危機を感じ、すぐ敵軍の飛行艇を盗んでここまでやってきた。
       ヘル・ハデスに気付かれぬようにな。」


ザトシ(それ絶対7soulのだな…)


ヘル・ハデス「だが、今の話を信じられるというのか?」


ガウス「貴様は絶対に嘘は付けない…支配者は怒り、恐怖、怨みなどの『感情』が物質化されたもの。
     一方、嘘というのは"感情を表に出さない"ためのもの。
     その嘘を付いてしまえばその『感情』に背くことになり、その存在感は徐々に薄れていく…
     だから支配者が嘘を言うことは絶対にあり得ない!」


正男(嘘は付かない…ひょっとして啓鬼郎が嘘を付かないのもこのためか?だとすれば…)


ヘル・ハデス「邪魔だ。消えろ!!
        エクリプス・キャノン!!


ヘル・ハデスは目玉からガウスを焦点に蒼い波動を放つ。
ドオオオオン!!

ガウスに向けられたその波動の衝撃によって周囲の地面が砕け、さらに突風も周囲に広まった。


正男「うっ!!」


その場にいた全員が腕で顔を伏せる。


ガウスは波動の下敷きとなり、変わり果てた姿に…。


正男達「ガウス!!」


四天王「ガウス様!!」


腕を下ろした彼らはその姿を見て叫んだ。


ヘル・ハデス「余計なことを…まあよい。もう隠してても仕方の無いことだ。
        この事実を知っているのは十八覇者だけだったが、啓鬼郎が覇者を抜けたことでどちらにしても広まっていただろうからな
        啓鬼郎は勿論、同じ肉体に精神が宿る闇男もこの事実を知っていることだろう」


正男「闇男兄さんが・・・?」


トラス(やみおって正男兄さん達のお兄さん?ザトシが言っていた兄弟のムジュンがこんなに早く現れるなんて…)


修羅場の部外者が一人。
正男兄弟であることは事実だが
今の話を理解する権利があるかどうか話は別だ。


正男「ここまで好き放題しやがって…!もう許さん、この世界にとって最も目障りであろう貴様を
    今、この手で消し去ってやる!!」


ヘル・ハデス「フン、面白い。ならば見せてもらおう。
        貴様等屑如きに何が出来るという事をな!」


ヘル・ハデスは流石に正々堂々と戦うつもりなのか
その場から離れ、まるで戦場を選ぶかのように屋上の人気(ひとけ)の無い場所へと移動する。
正男達と四天王達はそれを追って、ヘル・ハデスとの最後の戦いに向かった。


〜〜


ゼドルの声「儀式とやらが行われるというのはここか?」


何とか屋上へとやってきたゼドルと、啓鬼郎とその手を引くロベルトの計3人。


啓鬼郎「ガウスの姿が見当たらないな…」


ロベルト「人の気配が遠くからするよ。行って見よう」


啓鬼郎「ちょっと待て!そこの地面だけに皹が入っているのが気になる。」


波動によって穴こそ開いていないものの、ボロボロになった地面。
その上にやや横向きに倒れた屍がそこにあった。
啓鬼郎はその屍を見てはっと目を開いた。

それは先程まで追っていたガウスだったのだ。


啓鬼郎「ガウス!」


啓鬼郎は驚きと怒りのあまり、言葉を失った。


啓鬼郎「くそ!なんてこった…
      ガウスを殺すのはこの俺だったってのに…
      奴に先を越されたか…!!


ゼドル「その屍がどうかしたか?」


啓鬼郎「急ごう。早く気配のするという所に行くぞ!」


ロベルト「うん」


3人は走った。
正男達とヘル・ハデスが戦う最後の修羅場へ…。



♪GameCube「Shadow the Hedgehog」より
from VGMusic

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