中間ストーリー30
〜小さな生命の哄笑〜
 (3/5)


そんな中、最初に沈黙を破ったのは風王だった。


風王「…地球防衛軍よ。
    どうやら我々は、大きな勘違いをしていたようだ。」


炎影「そうだな…。俺たちの敵はあくまでも十八覇者。
    これからは手を組んで十八覇者を倒し、世界平和を導こう。」


???「随分と大人数で戦ったみたいだね」


突如、空気を読まないように現れ出たのは謎の魔術師、レイドだった。


レイド「やあ正男。随分と大人数で戦ったみたいだね」


ジャック「お前は、さっきの泥棒魔術師!!」


正男「そういえばお前、アサシンの兜も盗んでたみたいだな。
    俺たちの邪魔はしないと言っていたが、世界の住民から強引に物を盗るようじゃ、お前にはお仕置きが必要みてえだな」


レイド「ならばなぜ、僕が操られている時にトドメを刺そうとしなかった?」


正男「あ…あの時は盗みをしたって分からなかったんだよ!」


レイド「まあいい、僕はルドアを倒すためなら手段を選ばない…。
     引き続き、お宝を探しに行くとするよ。」


レイドは正男達とは逆方向へと歩き出し、城を飛び降りて行った…。


正男「あいつ…」


浩二「極力あいつが悪さをしないように見ていないとね…」


〜〜


闇男「それより、正男。」


正男「どうした?兄さん」


闇男「パートナーとの約束を果たすためにに自分が犠牲になる。今日の啓鬼郎はまさしくそうだった。
     やはり、いざとなると自分の命なんて惜しくなくなるものなのだろうか。」


正男「さあな。俺に聞かれてもそれは分からないよ。」


浩二「でもまさか、あの啓鬼郎が…庇うなんて思ってもみなかった…」


闇男「あいつは最期まで強がってたよ…。
    最期まで、俺を軽蔑していた…笑いながらな…。」


ザトシ「やっぱりあいつもヘル・ハデスと一緒だったんだな。
     嘘を付くと存在が薄れ、最後には姿を消してしまうことが。」


クリス「啓鬼郎はヘル・ハデスの共同体みたいなものだったからね…」


闇男「それにしても、今日の俺、かなりカッコ悪かったな…
     すっかり啓鬼郎には最期まで軽蔑されてたしな…啓鬼郎に頼ることばかり考えてた証拠だ。」


そこにはいつも現場を仕切る闇男とは違う表情があった。
それは明らかに自信がない…そんな表情だ。


正男「……なあ、闇男兄さん。」


闇男「ん、なんだ?」


正男「啓鬼郎が最期まで兄さんを軽蔑してたのはきっと
    自分自身をもう1度見直すべきだっていう忠告なんじゃないかって思うんだ。」


闇男「忠告?どういうことだ?」


正男「啓鬼郎が抜け、力の一部を失った自分を見直し、それを認め、受け入れる…
    そうすることで自分が今後、啓鬼郎が居た頃よりもっと強くなれる出発点になる。
    啓鬼郎はそのことを分かって欲しくて、あえて軽蔑してたんじゃないのか?俺はそう思う」


闇男「正男、お前…。」


まさか我が弟にこんなことを言われるとはな…闇男は驚きで一杯だった。


トラス「正男兄さん。浩二兄さん。ザトシから聞いたよ。融合のこと…」


そこで話題は変わった。


正男「そうか…お前と再会して間もないが、確かに俺たちはすぐ他の世界に行かなきゃならない。
    だからもう暫く会えそうにないな。」


闇男「地球防衛軍にも戻ってこられないのか。それは残念だな…」


浩二「闇男兄さん。もう、大丈夫なの?」


闇男「ああ。こちらの戦力には心配することはない。
    それにShadow Armyも手を貸してくれるみたいだしな。」


浩二「いやその…、啓鬼郎のことなんだけど…」


闇男「もう大丈夫だ。あいつはきっと、どこかで俺たちを見守ってくれているさ…」


風王「影兵は裏世界に封印させておこう。均衡が崩れたら溜まった物じゃないしな。」


正男「じゃあ、そろそろ行くよ…」


闇男「ああ。必ず、帰ってきてくれよ…」


トラス「兄さん達、それにザトシとクリスも。
     絶対負けないでね。」


正男達はShadow Armyの本拠地を後にする。
ちなみにゼドル達はいつの間にか姿を消していた。


闇男「さて、俺たちも帰ろうか。ジャック。」


ジャック「はい…」


闇男「それから……啓鬼郎…。


闇男はもう既に消滅してしまっている啓鬼郎にこの思いが届くことを信じ、呟いた───


しかし、思いは届いているのだろうか?
いや、きっと届いているだろう…
啓鬼郎が闇男の中に生き続けている限り。
そして…



啓鬼郎と闇男の間に強い絆がある限り…。





トラス「闇男さん。僕も途中まで道一緒だと思うので、同行しましょう。」


闇男「君は…」


トラス「トラスっていいます。一応、アナザージェネストっていう防衛軍の一人です。」


ジャック「アナザージェネスト?」


トラス「まあ、詳しくは後で…」


3人も本拠地を後にする。


土影「久々に大仕事をしたな」


炎影「まあ、うちの主将を失っちまったがな…」


水影「でも私達。何か重要なこと忘れてないかしら…」


風王「…ひょっとしてあいつのことか?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜Shadow Army その頃の地下室〜〜〜〜〜〜〜〜〜


影竜「結局俺は死ぬのか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜終〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


炎影「ああああああああああああああ!あいつ無事か!?


土影「落ち着けよw
    あまりの慌しさに上司を"アイツ"呼ばわりまでしてんぞw」


水影「あんたって人は…」


風王「やれやれ…」


風王は呆れたように肩をすくめた。


--------------------------------------------------------------------------


ここでこの世界の物語は完全に幕を閉じる。

ヘル・ハデスを倒し、あとは十八覇者を止めるだけ。それが彼らに与えられた新たなる使命である。
闇男のパートナー、啓鬼郎を失い、今後は再び彼自身が一人身で戦うこととなるだろう。

果たして、彼らは以後どのような戦いをするのだろう。
Shadow Armyと手を組んだからこそ、これまでよりかは平和の扉が軽くなっただろう。
だが、必ずしもそうとは限らない。油断から劣勢が生まれるかもしれない。
どんなに仲間が多くなっても油断せず、しっかりと引っ張らなければ扉は絶対に開かない。
だからこそ彼らはきっとこれまで以上に力を振り絞っていくことだろう…


次へ


♪鼓動
from あおいとりのうた

inserted by FC2 system