中間ストーリー9
〜最後に笑うのはポジティブな奴〜 (1/2)
ライ「みなさん、緊急事態です。直ちに中央司令部へ帰還してください。」
通信機を通してWPS中央の仲間に一斉にメッセージを送るライ。
その声は共に行動をしていたレギュラー4人にも届いていた。
報告を受け、各メンバーから驚きの声が上がる。
無理もない。ライ程の実力者がいながら、この事態になったのだから。
〜WPS中央司令部〜
ディレイル「おいおい、冗談だろ?ヨシキが奴らにさらわれただって?」
正男「どうするんだ?あいつがいなければ、これ以上仲間を集めに行くのは難しくなるぞ……。」
ライ「すみません……私の不注意でした……。」
ハル「ライがワシらに謝るとは……。」
ミハリア「それだけ相手が強大だったってことよね……。」
浩二「大時空軍……どこまで恐ろしい奴らを仲間にしているんだ……。」
クリス「それに引き替え、こっちにバックアップがいなかったら仲間集めは困難よね……。」
ザトシ「ヨシキを救出しに行くしか……。」
レニウス「でも、ヨシキの能力に頼れない以上、探しようがないんじゃないか?」
ライ「ヨシキの能力は捜索においても画期的でした。
その能力が使えない今……私たちは、レーダーを使って探すしかありません。
尤も……効果は期待できませんが……。」
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ヨシキ「……っ……ここは……。」
辺り一面を見回す。巨大なモニター、さまざまな機材……。
まるで、司令室のような光景だった。
自分は先ほど、大時空軍の奴らによってさらわれた。
ということは、ここは大時空軍の本拠地なのだろうか……。
???「目を覚ましたようだな。」
ヨシキ「っ!!その声は……!」
ヨシキは身を乗り出そうとしたが、身動きが取れない。
どうやら、手足を枷で縛られているようだ。しかも壁にみっちり貼り付けられている。
ルドア「ククク……こうして、お前と一対一で話すのは初めてだな。」
ヨシキ「ルドア……っ!」
聞き覚えのある、忌むべき声、憎むべき存在。
そう、目の前にいるのは……間違いない。紛れもなく、ルドア本人だった。
ヨシキ「……俺をさらった奴らは、俺の能力を大時空軍のために利用させて貰うとか言っていた……
まさか、俺の能力を"覚える"ためか……?」
ルドア「残念ながら、私にはお前のような表沙汰に出ない技を覚えることはできん。」
ヨシキ「じゃあなんだ、俺を洗脳するか……?」
ルドア「ハンッ、WPSに所属しているお前を洗脳なんかできないことくらい、分かっている。
面倒な能力だな、洗脳防止スキルというのは。」
ヨシキ「お見通しか……その通り。あらゆる技術をもってしても俺を洗脳するのは不可能なはず……
ではどうやって俺の能力を?」
ルドア「ククク……簡単な話だ。今に分かる……。」
ヨシキ「……?」
その瞬間、ルドアにノイズが走りだし、やがてその姿は消えた。
後ろにはウイルスコアの姿が……。
ヨシキ「今のルドアは、お前による立体映像か……。」
ウイルスコア「そのとおり。そして我は今からお前のコピーを作り出し、我々のアナライズ担当を作り出す。」
ウイルスコアはヨシキの肩に手を乗せ、瞑想して何かを唱えた。
もちろん拘束されているヨシキは抵抗することが出来ず、ただ黙ってみているしかなかった。
目の前に、0と1の数字が走り出す。
数字は大量に集い、ヨシキの周りを囲むと、やがて1つとなり、一人の人物像を形成した。
それは想像もつく、ヨシキと瓜二つの姿。
ウイルスコア「ハハハ……これで我々にも、お前と同じバックアップ担当者がついた。
そして今、WPSにはお前は居ない。我が大時空軍が有利というわけだwww」
ヨシキ「なん……だと……。」
ウイルスコア「さて、こいつも用済みだ。おいお前ら!こいつを独房にでもぶち込んどけ!」
∞ペトモン兵士「っは。」
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∞ペトモン兵士「おら!入れ」
ヨシキ「っ……!!」
牢にぶち込まれるヨシキ。
冷たい床の感覚と、たたきつけられたかすかな痛みが、体に伝わってくる。
体を起こし、辺りを見回すが、使えそうなものは何もない。
目の前の檻は、とても頑丈そうだ。どう見ても自力では壊せないだろう。
手足の自由はあるものの、ここから出られないのであれば、何も出来ない。
通信機も取り上げられている。
とりあえず、壁にもたれたそのとき、部屋の奥から声が聞こえた。
???「フン……お前も、運のない奴だ。」
ヨシキ「誰だ……?」
声の主は立ち上がり、檻へ近づく。
紅い髪と、蒼いキャスケット。
そしてケープコートのようなものに身を包んだ人物……。
違男 星空パレット |
ヨシキ「お前は……。」
違男「違男だ。今は……このブロックの看守を任されている。」
違男は檻の前にしゃがみ込んだ。
対面するかのように、壁に背中を預けるヨシキに向かって話しかける。
違男「無様だな。お前、WPSの指揮官なんだろう?」
ヨシキ「……変なことを聞くな?だったら、どうするんだ。」
違男「フン、どうもしないさ。指揮官だろうと一般兵だろうと、
捕虜になったら関係ねえ。捕虜は捕虜だ。」
違男はそういうと、レッグポーチから何かを取り出した。
あれは……クッキーだろうか?
違男「どうだ、食うか?」
ヨシキ「……いや、今はそんな気分じゃない。」
捕虜にクッキーを差し出すとは、一体何を考えているのだろう。
このような状況で、とてもそれを食べる気分にはなれない。
きっと、レニウスが今の自分と同じ立場なら喜んで食べていたのだろうが。
違男「……そうか。」
もさもさとクッキーを食べ始める違男に、ヨシキは問いかけた。
ヨシキ「ここは……どこだ。」
違男「さぁて、どこだろうな。少なくとも、大時空軍の本拠地じゃぁないぜ。」
ヨシキ「……俺を監禁する理由は何だ。
ウイルスコアは…大時空軍はバックアップを手に入れた。
もう用済みなはずだろう。なぜ殺さない?」
違男「なんだ、リーダーの癖に、そんなことも気づかないのか?
フン。いいだろう、教えてやる。お前は言わば“エサ”だ。
こうしてチラつかせておけば、他の奴らを簡単におびき寄すことができる。
どうせなら、まとめて潰したほうが効率がいいし、そもそも殺してしまったら、
面白くないだろう?」
ヨシキ「……。」
違男「……それに、お前には逆探知能力があると聞いた。
大時空軍の連中、きっとその能力で根城がバレるのを恐れてんだ。
そうでもなければ、わざわざこんなところに、監禁する場所なんて設けねぇ。」
ヨシキ「……なら、試してみるか。」
違男「フン、雑魚どもの与太話だと思っていたが、まさか本当にそんな能力が?
ま、せいぜい足掻いてみろ。結果を楽しみにしているぞ。」
と、立ち上がる違男。
ヨシキ「待ってくれ。お前はどうして、俺にそんなことを……?」
違男「あ?」
ヨシキ「今この状況では、俺とお前は敵同士のはず。
それなのに、どうして俺にいろいろ教えてくれるんだ?」
違男「……只の戯言だ。深い意味なんてねぇよ。
まあ強いて言うなら……そうだな。
お前らみたいな面白い奴は、嫌いじゃねぇ。
それだけだ。」
ヨシキ「フッ……奇遇だな。俺もお前のような奴は嫌いじゃないんだよな。」
違男「……邪魔したな。」
その言葉を最後に、違男は独房を後にした。
〜〜
違男「……フン、妙な男だ。」
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♪gate to sanctuary
from 3104式